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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

もう二度と、たどり着けないかもしれないバーで

隠していた宝物をひっそりと掘り返しては、その存在を確認している気分になる店がある。銀座の大通りから少し入った、古いビルのとある店の奥に隠された一室で、隠れ家のようにひっそりと営業しているバーを、そんなふうに想っている。銀座のバーとはいって…

英語だけでは、深く考えられない

言語学習が中途半端だと、物事を考える能力の発達に影響を及ぼすと言われることがある。 日本語を生まれた時から日常的に聞いて話し、読んで書き、ずっと学校で国語表現を学んだ人を「100%日本語を学習した人(ネイティブ)」とすると、日本語で思想や哲学を…

落語初心者による、「渋谷らくご」体験記

落語って面白いのだろうか。好きな人はよく通っているけれど、初心者の私には古い言葉も文脈も理解できず、きっと楽しめないに違いない。けれどいつかは行ってみたい。そんな気持ちをずっと抱えながら生きてきた。 しかし先日、思い切って落語へ行ってみよう…

東京者は「地方の人」と言うと嫌われる

そういえば、今年は「地方」へ行っていない。 それどころか東京23区、しかも千代田、中央、港、渋谷、新宿の5区以外へは両手で数えられる程度しか訪れていないような気もする。「田舎っぺ」という、田舎で育った人や、田舎にずっと住んでいる人を指すあまり…

焼肉屋でタン塩ばかり食べてしまう/下北沢牛タン居酒屋「たんたん」

「タン塩」は、その言葉に触れてしまったら最後。コリコリ、プリプリとしたなんとも言えない食感と、噛めば噛むほどに出てくる肉の旨味を思い出し、その瞬間、すぐ焼肉屋へ駆け込みたくなってしまう。 お昼時ならば、牛タン・とろろ・麦めしの抜群のセットを…

都電荒川線と母の思い出/三ノ輪・蕎麦「砂場総本家」

私と母はいつも一緒だった。 幼い頃、母と2人でちょっと遠くへ出掛けるには必ず都電荒川線を使っていた。都電を使う理由は、荒川区町屋に生まれ育ち、社会経験の少ない母にとって、JRや地下鉄よりも、昔の記憶を頼りに使える都電が1番勝手が効くためだ。 「…

雨上がりの晴れやかな気持ちと、ショパンとベトナム戦争

振り返れば、暗闇にいた時間があったなと、そんな遠い日を思うことがある。それは一見、非常に貧しかったり苦しかったりする話でもあるけれど、見方によっては、煌びやかで楽しい毎日であったりもする。それに、その暗闇の体験がきっかけとなり、その後の人…

昨日の声、遠い土地、違う国

異国に想いを馳せることが多くなりました。いや、その余裕を持てるようになった、との表現の方が適切かもしれません。 仕事の関係上、違う国にいる仲間と電話で会議をよくするのですが、そのために、彼らの居る場所の時差を考えながら、互いにスケジュールを…

食べログの代わりに

古い飲食店や酒場を日々探し歩いている私は、あまり食べログを参考にしません。じゃあどう店を探すかって?今日はそういう話をします。先日「週刊朝日」で池波正太郎や松本清張の担当編集をしていた重金敦之さんの本を3冊買いました。「美味探求の本」「作家…

大事な人が消えて無くなる夢を見る

悪夢にうなされ、明け方にハッと目を覚ますことがある。哀しいとも、やり切れないとも違う、無常とはこういう気持ちを指すのだろうという気持ちで。 時々、大事な人が突然消えて無くなる夢を見る。直接死ぬのを見てしまうわけではない。暫く連絡がないなと思…

街角のフリーペーパーは、ポップアップウィンドウに似ている

就職活動で「学生時代はフリーペーパーを作っていました」なんて言うと、「あー、うん、なるほどね」となんとも言えない反応をしたりされたりするようですが、あれは何なのでしょうね。 フリーペーパーが悪いわけでも、学生の作るフリーペーパーが酷いわけで…

ベートーベンのような人と、映画の中のショパン

世の中には、一緒にいると巻き込まれそうになる人と、誘われてしまいそうになる人といる。 前者は、マイナスの感情は怒号、プラスの感情は大笑いといった感じで激情的に表現するし、「誰かに伝えたい」との思いで聴衆を前提としたアクションをするので、近く…

口に出して言っても、言わなくても

大切な人に思いの丈を打ち明ける時、家族や仲間に感謝を伝える時、大事な思い出や作品について語る時、どこから話して、どこまで伝えるかとても悩む。 悩んだ末、私は言葉をかなり削って伝えるタイプだと思う。ハードボイルドの見過ぎか、文字数に制限のある…

男だったら良かったのに

時折、なぜ私は男でなかったんだろうと悔やむことがある。いや、生まれ持った性について、深く悩んでいるわけではない。社会に不満を持っているわけでもない。けれども、ふと、そう感じてしまう時があるのだ。 例えば、夜遅くに仕事が終わって一杯飲みたいな…

ギャンブル、馬券、酒、鰻。今年出会えて良かった本

出かける際、いつも鞄には必ず2、3冊本を入れている。本屋やamazonでは、月10〜20冊、多い月は30冊程度買っている。お陰で鞄の中のみならず、台所の棚、テーブルの下、ベッドの脇など家の中のありとあらゆる所に本が転がっているという話は置いといて、たま…

「40代にもなると知っていることの繰り返しになる」

「20代は新しい発見ばかりだが、30代にはそれがほとんどなくなり、40代にもなると知っていることの繰り返しになる」みたいなことを、確か作家の白石一文が「僕のなかの壊れていない部分」で書いていた。とても憂鬱な感じで、主人公にそう話させていた。主人…

なんというか、始まってしまったものは、もう止められなかったのだ。

人は何のために学び、何のために生きるのだろうか。先日、知人が私に「勉強をするなら、仕事のためになることをしないと無駄に思えて焦ってしまう。休みの日は友達や誰かに会わないと辛くて仕方が無い。だから正反対の貴方が羨ましいし、凄いと思う」と言っ…

私を疾走させるガパオライス

学生の頃からエスニック料理を定期的に食べに行っている。お店は原宿の「チャオバンブー」と飯田橋の「ティーヌン」がお気に入り。屋台の雰囲気が再現されていていい。たまに、リゾートホテルのような洒落た雰囲気の店があるが、ああいうのはなんか違うとい…

パパが買ってくれたものだから

今週のお題「愛用しているもの」昔から、古くなったから買い替えようだとか、話題の品を買ってみようだとか、そういう感覚に乏しい。それゆえ家には物が少ない。服も少ない。そしてそれらは、まだ使えるからこのままでいいという物ばかりで、下手すると5年選…

映画が苦手だった

映画が苦手だった。 映画を誰かと見るのも苦手だった。これまで見たことのある映画といえば、「タイタニック」「グリーンマイル」「ターミネーター」など代表的な作品で、しかもたまたま金曜ロードショーでやっているからとの理由で見た程度。合計しても30作…

僕たちはいつも情報に騙されている

客の目の前で調理する鉄板焼が名物のレストランで、食事をし始めようという時だった。彼は言った。「ただお肉をお皿の上にのせて出されるだけでも十分美味しいのに、目の前で調理するだとか、なんでこういう演出をすると、みんな喜んでさ、美味しい美味しい…

この辺りも変わってしまった

タクシーに乗ると、運転手に大体話しかけられる。私は彼らに話しかけやすい見た目でもしているのだろうか。そしてどの運転手も、どこのどんな道を通っていても決まって「この辺りも変わってしまいましたねえ」としみじみ言う。東京のタクシーの運転手という…

ああ、これこれこの味

私は物事をうっかり忘れてしまいがちなので、頼まれごとや知り得た情報などは、片っ端からメモに取るようにしている。そして、書き取ったメモを見直すのを忘れないように、スマホの通知機能を使ってリマインドさせ、必ず読み返すようにしている。この方法に…

誰かに教えて貰った知恵や習慣を生活に取り入れるのは、良いエッセイを読んだ後の人生に似ている

誰かに教えて貰った知恵や習慣を生活に取り入れるのは、良いエッセイを読んだ後の人生に似ている。誰かの感受性とともに、生きている感じがする。 例えば、家で飲むレモンサワー。友人の家に遊びに行ったら、缶入りのレモンサワーをわざわざ「うすはり」のグ…

ピアニストがピアノを弾くように、言葉を話したい

私は話すのが下手くそだ。はっきり言って吃り(ドモリ)である。吃りで、しかも、言葉に抑揚がない。 どんな吃り方かというと、頭で考えていることを、言葉にして口で発するまでにかなり時間がかかっている。なので、長く沈黙したり、回りくどい言葉を選んで…

普通のカフェでリラックスできない/四ツ谷のジャズ喫茶「いーぐる」

カフェに1人でいると、そわそわしてしまう。「おしゃれすぎて落ち着かない」とかいう類ではなく、隣の人の動きや声、雑音、匂いにいちいち反応してしまって落ち着かず、そわそわしてしまう。 仕事に疲れ、カフェへ行ってほっと一息つくどころか、あっちこっ…

マイブーム

芸能人なんかへのインタビューで「マイブームは何ですか?」という質問がしばしばある。それに対して、よく「今はカフェ巡りにはまっていて」だとか、「最近は釣りですね」と回答をしているのを見かける。これを見ると、私はいつもモヤモヤとしてしまう。理…

ラジオ体操の歌

目が覚めると、午前6時22分だった。部屋に差し込む陽の眩しさに起こされたのだ。こうやって、瞼を閉じていても感じられる光の力で起床するのが好きで、夜眠る時はレースのカーテンだけを閉めるようにしている。それが理由で、住む家は必ず朝日が差す部屋を選…

住みたい街、通いたい酒場

気に入って、長く住んでる街がある。惚れ込んで、よく通っている酒場がある。 そうやって暮らしていると、「どうしてその街に住んでいるの?」だとか「よく行くその店のほかにお勧めはある?」などと質問をよく受ける。答えているうち、私の住みたい街と通い…

ただ、時間が過ぎるのが怖いんだ/六本木「カファ・ブンナ」

六本木の喫茶店「カファ・ブンナ」でコーヒーを飲んでいると、彼から「今何してる?」と連絡がきた。忙しい彼からの誘いはいつも突然だ。「六本木でお茶してる」と返すと「一人?合流してもいい?」と言う。 「カファ・ブンナ」は六本木と乃木坂の間の住宅街…

八重洲・おかめの「茶飯おでん」

料理が旨くて雰囲気もある飲食店の話は、多くの人が欲しがる情報だ。一方で、特別美味しくもないし、話題になるような看板メニューもない普通の店の話に、興味のある人は殆どいないだろう。 けれども私は、そういう店の話をしたり聞いたりするのが結構好きだ…

気になって仕方がない

一度意識すると、何故かその物事の情報ばかりが目に付くようになる。 例えば、落ち込んでいる時に異性の同僚が優しい言葉を掛けてくれたとする。そして「あんまり話したことなかったけど、いいやつじゃん」と好意的な印象を持ったとする。するとその日以来、…

休日の昼酒は蕎麦屋に限る

休日とあらば、目覚めてすぐに飲みたくなるのがビールである。昼過ぎまで寝た後の起き抜けの一杯も最高だが、「いや、昨夜も結構飲んだしな」と少しためらって、一先ずシャワーを浴びてから、「いや、やっぱり」と冷蔵庫から缶ビール取り出しプシュっとやる…

ご褒美のアイス

スイミングスクールの帰りに食べるアイスが好きだった。アイスはいつも、帰り道にあるクリーニング屋で買っていた。 スイミングスクールには、幼稚園に入ってから小学校3年生くらいまで、週2回通っていた。水泳は嫌いではないし、むしろ得意な方だったが、そ…

私は鼻が利くタイプ

まだ1月だというのに、もう花粉症に悩まされている。朝起きて日が暮れるまで、くしゃみ鼻水が止まらない。「鼻が利く」という2つの意味を持つ言葉があるが、次来そうな株や商品は全く当てられないくせに、花粉やホコリの存在なら微量でもすぐに分かるという…

貴方にとっての運命の恋人、それは、私にとっての鰻のことである

今週のお題「今だから言えること」 出会ってから今まで何とも思っていなかった人が、突然自分にとって重要な存在になることがある。それは、貴方にとっての片思いの相手や運命の恋人、仕事の相棒のことであり、私にとっての鰻のことである。 私が鰻と初めて…

季節感のない四季と、重力のない季節

都会に住んでいると、季節を感じる機会が少ない。 例えば近頃は、街に落ち葉が減った気がする。昔は寒い家に暖かい日光を当てるため、街路樹には落葉樹を使うのが主流であったが、今では緑を増やすためだとか、片付けるのが面倒だとか歩行の邪魔だとかで、葉…

感覚のバー

年末年始は大抵一人で過ごしている。帰省することもない。家族皆で過ごした最後の年は15年以上前になる。親戚に最後に会ったのも同じ位昔のことだろうか。もう殆ど、顔も名前も思い出すことができない。 地元が無いので、地元の友人と集まる機会もない。近頃…

「もしくは、蝶のような人」

別れは始まりとともにやって来る。誰かが死んだその瞬間、どこかでは新しい命が生まれているなんて言われるように、何かの終わりは、何かの誕生を知らせている。作用があれば、反作用がある。後退する力があるということは、前へ進む力があるということだ。…

いい人は、いい本を知っている

「この人はいい人だ」と思ったら、必ず好きな本について聞くことにしている。 人は本を読む時、必ず孤独になる。なぜなら、孤独になると他の誰の声でもない、そこにあるテキストの音に耳をすますことができる。耳をすますには、静かでなければならない。誰か…

「年内にやっておきたいこと」

12月。今日から始まるこのひと月で、今年が終わるというのに、余り惜しさや刹那を感じないのは、不思議な気分だ。まあおそらく、まだ気温が暖かいから、その事実に向き合えていないだけなのだろう。 季節の移ろいは、時間の経過を教えてくれる。自分がまたひ…

空想と現実とを繋ぐ乗り物と、「RAPID COMMUTER UNDERGROUND」

乗り物に乗ると、どこかへ行ってしまいそうな気分になる。いや、乗り物に乗るんだから、どこかへ辿り着くのは当たり前なのだけれども、そういうことではない。例えば、東京から新幹線に乗ったんだから、東北だとか関西だとかに到着する、といった単純な話で…

新幹線で飲む酒

大人になった今や、旅の楽しみといえば観光よりなにより、酒である。旅先で飲む酒は無論格別だが、移動の新幹線で飲む酒というのもまた良いものである。特段旨いものを口にできるからというわけではなく、限られた時間でそこでしか飲めない酒をやれる、とい…

キュウリのサンドイッチの描写が良かった

物語やエッセイの感想を聞かれると、まず最初に「キュウリのサンドイッチの描写が良かった」なんて調子で答えてしまうほど、テキストで描かれる食事のシーンが好きで、よく覚えている。むしろ、それしか覚えていなかったりする。 アガサ・クリスティ「そして…

2階

思えば2階にしか住んだことがない。一人で住んでいる今も、家族と暮らしていた時も、マンションの2階だった。2階よりも高い場所で暮らしたり、過ごした記憶がない。 高層ビルが乱立するこのご時世に、なんだか貧乏くさいエピソードだなと自分では思っていた…

夢から目覚めさせる曲

この頃の私は、夢の中で音楽がかかるのをきっかけに目覚めることが多い。 かかる音楽はショパンやラフマニノフといったピアノ演奏曲。私がホロヴィッツやユンディ・リなどピアニストの演奏を、昼夜問わずほとんどの時間聴いているため、選曲されたと思われる…

深夜の寿司の背徳感

無性に寿司を食いたくなる時がある。口に入れた途端に広がる、あの生魚の味と触感、飲み込んだ後に鼻に抜ける匂いを欲しているのである。そんな気分の時に限って、夜の11時を超えているので店探しに苦労する。なぜなら、ちゃんとした寿司屋というのは、店を…

死にたくもないし、生きたくもない

割と酷い骨折で入院していた。世話になったのは、いかにも何か“出そう”な古い大学病院だ。泊まっていたのは、8つのベッドが押し込められるように2列に並んだ狭い病室で、右の列の手前から3つ目が私の寝床だった。鉄パイプにせんべい布団を1枚載せただけのよ…

「死ぬのにはちょうどいいタイミング」なんてあるのだろうか

9月1日は「防災の日」ということで、その日の東京新聞のコラム「筆洗」では、芥川龍之介の関東大震災の避難時における有名なエピソード「妻は児等の衣をバスケットに収め、僕は漱石先生の書一軸を風呂敷に包む(『大正12年9月1日の大震に際して』より)」が…

うまいもんは「ペロリと食べられる」のは当たり前で、本当は「おかわりしたい」

いい言葉選びをする人を、知らぬ間に好きになっていることがある。同様に、文を読み進めるうち、何度も胸を鷲掴みにされ、遂には書き手に惚れてしまうことがある。言葉に裏打ちされた思想に、口説かれるのだ。と、これから惚れた作家について順番に書こうと…