話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

この辺りも変わってしまった

タクシーに乗ると、運転手に大体話しかけられる。私は彼らに話しかけやすい見た目でもしているのだろうか。そしてどの運転手も、どこのどんな道を通っていても決まって「この辺りも変わってしまいましたねえ」としみじみ言う。東京のタクシーの運転手という…

誰かに教えて貰った知恵や習慣を生活に取り入れるのは、良いエッセイを読んだ後の人生に似ている

誰かに教えて貰った知恵や習慣を生活に取り入れるのは、良いエッセイを読んだ後の人生に似ている。誰かの感受性とともに、生きている感じがする。 例えば、家で飲むレモンサワー。友人の家に遊びに行ったら、缶入りのレモンサワーをわざわざ「うすはり」のグ…

ピアニストがピアノを弾くように、言葉を話したい

私は話すのが下手くそだ。はっきり言って吃り(ドモリ)である。吃りで、しかも、言葉に抑揚がない。 どんな吃り方かというと、頭で考えていることを、言葉にして口で発するまでにかなり時間がかかっている。なので、長く沈黙したり、回りくどい言葉を選んで…

普通のカフェでリラックスできない/四ツ谷のジャズ喫茶「いーぐる」

カフェに1人でいると、そわそわしてしまう。「おしゃれすぎて落ち着かない」とかいう類ではなく、隣の人の動きや声、雑音、匂いにいちいち反応してしまって落ち着かず、そわそわしてしまう。 仕事に疲れ、カフェへ行ってほっと一息つくどころか、あっちこっ…

マイブーム

芸能人なんかへのインタビューで「マイブームは何ですか?」という質問がしばしばある。それに対して、よく「今はカフェ巡りにはまっていて」だとか、「最近は釣りですね」と回答をしているのを見かける。これを見ると、私はいつもモヤモヤとしてしまう。理…

住みたい街、通いたい酒場

気に入って、長く住んでる街がある。惚れ込んで、よく通っている酒場がある。 そうやって暮らしていると、「どうしてその街に住んでいるの?」だとか「よく行くその店のほかにお勧めはある?」などと質問をよく受ける。答えているうち、私の住みたい街と通い…

ただ、時間が過ぎるのが怖いんだ/六本木「カファ・ブンナ」

六本木の喫茶店「カファ・ブンナ」でコーヒーを飲んでいると、彼から「今何してる?」と連絡がきた。忙しい彼からの誘いはいつも突然だ。「六本木でお茶してる」と返すと「一人?合流してもいい?」と言う。 「カファ・ブンナ」は六本木と乃木坂の間の住宅街…

八重洲・おかめの「茶飯おでん」

料理が旨くて雰囲気もある飲食店の話は、多くの人が欲しがる情報だ。一方で、特別美味しくもないし、話題になるような看板メニューもない普通の店の話に、興味のある人は殆どいないだろう。 けれども私は、そういう店の話をしたり聞いたりするのが結構好きだ…

気になって仕方がない

一度意識すると、何故かその物事の情報ばかりが目に付くようになる。 例えば、落ち込んでいる時に異性の同僚が優しい言葉を掛けてくれたとする。そして「あんまり話したことなかったけど、いいやつじゃん」と好意的な印象を持ったとする。するとその日以来、…

休日の昼酒は蕎麦屋に限る

休日とあらば、目覚めてすぐに飲みたくなるのがビールである。昼過ぎまで寝た後の起き抜けの一杯も最高だが、「いや、昨夜も結構飲んだしな」と少しためらって、一先ずシャワーを浴びてから、「いや、やっぱり」と冷蔵庫から缶ビール取り出しプシュっとやる…

ご褒美のアイス

スイミングスクールの帰りに食べるアイスが好きだった。アイスはいつも、帰り道にあるクリーニング屋で買っていた。 スイミングスクールには、幼稚園に入ってから小学校3年生くらいまで、週2回通っていた。水泳は嫌いではないし、むしろ得意な方だったが、そ…

私は鼻が利くタイプ

まだ1月だというのに、もう花粉症に悩まされている。朝起きて日が暮れるまで、くしゃみ鼻水が止まらない。「鼻が利く」という2つの意味を持つ言葉があるが、次来そうな株や商品は全く当てられないくせに、花粉やホコリの存在なら微量でもすぐに分かるという…

貴方にとっての運命の恋人、それは、私にとっての鰻のことである

今週のお題「今だから言えること」 出会ってから今まで何とも思っていなかった人が、突然自分にとって重要な存在になることがある。それは、貴方にとっての片思いの相手や運命の恋人、仕事の相棒のことであり、私にとっての鰻のことである。 私が鰻と初めて…

季節感のない四季と、重力のない季節

都会に住んでいると、季節を感じる機会が少ない。 例えば近頃は、街に落ち葉が減った気がする。昔は寒い家に暖かい日光を当てるため、街路樹には落葉樹を使うのが主流であったが、今では緑を増やすためだとか、片付けるのが面倒だとか歩行の邪魔だとかで、葉…

感覚のバー

年末年始は大抵一人で過ごしている。帰省することもない。家族皆で過ごした最後の年は15年以上前になる。親戚に最後に会ったのも同じ位昔のことだろうか。もう殆ど、顔も名前も思い出すことができない。 地元が無いので、地元の友人と集まる機会もない。近頃…

いい人は、いい本を知っている

「この人はいい人だ」と思ったら、必ず好きな本について聞くことにしている。 人は本を読む時、必ず孤独になる。なぜなら、孤独になると他の誰の声でもない、そこにあるテキストの音に耳をすますことができる。耳をすますには、静かでなければならない。誰か…

空想と現実とを繋ぐ乗り物と、「RAPID COMMUTER UNDERGROUND」

乗り物に乗ると、どこかへ行ってしまいそうな気分になる。いや、乗り物に乗るんだから、どこかへ辿り着くのは当たり前なのだけれども、そういうことではない。例えば、東京から新幹線に乗ったんだから、東北だとか関西だとかに到着する、といった単純な話で…

新幹線で飲む酒

大人になった今や、旅の楽しみといえば観光よりなにより、酒である。旅先で飲む酒は無論格別だが、移動の新幹線で飲む酒というのもまた良いものである。特段旨いものを口にできるからというわけではなく、限られた時間でそこでしか飲めない酒をやれる、とい…

2階

思えば2階にしか住んだことがない。一人で住んでいる今も、家族と暮らしていた時も、マンションの2階だった。2階よりも高い場所で暮らしたり、過ごした記憶がない。 高層ビルが乱立するこのご時世に、なんだか貧乏くさいエピソードだなと自分では思っていた…

夢から目覚めさせる曲

この頃の私は、夢の中で音楽がかかるのをきっかけに目覚めることが多い。 かかる音楽はショパンやラフマニノフといったピアノ演奏曲。私がホロヴィッツやユンディ・リなどピアニストの演奏を、昼夜問わずほとんどの時間聴いているため、選曲されたと思われる…

深夜の寿司の背徳感

無性に寿司を食いたくなる時がある。口に入れた途端に広がる、あの生魚の味と触感、飲み込んだ後に鼻に抜ける匂いを欲しているのである。そんな気分の時に限って、夜の11時を超えているので店探しに苦労する。なぜなら、ちゃんとした寿司屋というのは、店を…

死にたくもないし、生きたくもない

割と酷い骨折で入院していた。世話になったのは、いかにも何か“出そう”な古い大学病院だ。泊まっていたのは、8つのベッドが押し込められるように2列に並んだ狭い病室で、右の列の手前から3つ目が私の寝床だった。鉄パイプにせんべい布団を1枚載せただけのよ…

うまいもんは「ペロリと食べられる」のは当たり前で、本当は「おかわりしたい」

いい言葉選びをする人を、知らぬ間に好きになっていることがある。同様に、文を読み進めるうち、何度も胸を鷲掴みにされ、遂には書き手に惚れてしまうことがある。言葉に裏打ちされた思想に、口説かれるのだ。と、これから惚れた作家について順番に書こうと…

誰のために言葉を残すか

毎年この時期になると「暦の上では秋ですが――」なんて言葉を必ず耳にする。とはいっても、現実は30度を越す猛暑であるのがお決まりのオチだが、昨日は盆の始めだというのに上着が欲しくなるほど肌寒く、日が暮れるのも早かった。そんな季節の変化を感じたこ…

餅は餅屋で買い、映画は映画屋に聞く

餅は餅屋ということで、批評や解説はなるべくやらないようにしている。感想ばかりを綴る書評や、出来事中心に連ねる日記も書かないようにしている。 ではお前はなにを記しているんだと言われれば、たぶんこれは日本的なエッセイである。事実や経験をベースに…

もんじゃが食べたくて

東京下町のソウルフードといえば「もんじゃ焼き」である。水でのばした小麦粉に、適当な具を入れウスターソースで味をつけ、熱い鉄板に広げて焼いてヘラでハフハフと食べるアレのことだ。ここふた月くらい食べてないなあ。すっかりご無沙汰である。 東京の下…

傘をさすと、突然一人ぼっちになる

梅雨入りが伝えられ、雨の日が続いている。雨の音は、孤独を感じさせる。特に、開いた傘へ連続的に叩きつけられる雨音には、寂しさを感じてしまう。雨が特別嫌いなわけではないし、おセンチな気分というわけでもない。でも一体それは何故だろうと疑問に思っ…

聴こえない歌

昔から苦手なことがある。スピーカーから流れる曲の歌詞を聴き取ることだ。 何か言葉を言っているとは分かるのだが、その内容を認識したり、意味を理解することがなかなかできない。歌い手が切ない恋に嘆いていても、明るい明日を望んでいても、音声だけでは…

英語では理解できない、「上を向いて歩こう」の歌詞の意味

「日本人は抽象的な表現ばかりだ」と、ネガティブな意味で指摘する声をこの頃よく聞く。欧米人のようにストレートに自分の意見を言ったり、直接的な表現をするべきであり、その方が「クール」なんて風潮から言われているのだろう。そんな話を聞く度、日本語…

眠れない夜のために

「最近眠れないんです」と後輩から相談を受けた。私も不眠症の経験があるので、眠れないと心もとなくなる気持ちがよく分かる。「不安だよね」「そうなんです、一人ぼっちな感じがして」。――以来、眠れない夜について考えている。 眠れない夜には、なぜ寂しく…