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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

好きな男の物語

女の子なら誰しも、アニメやドラマの登場人物に恋をした経験があると思う。例えば、ピンチの時に必ず救いに来てくれる「セーラームーン」のタキシード仮面、いたずらな態度とロマンチックな台詞で南を魅了する「ロングバケーション」の瀬名ーーと数え上げれば切りが無いだろう。キャラクターの魅力は千差万別なので、それはそれ、あれはあれ、どの男もいいなあと感じるのは重々承知だが、1番好きなのは誰かと聞かれたら?

 

私ならエドガー・アラン・ポー推理小説盗まれた手紙」に登場するC・オーギュスト・デュパンと答える。デュパンはどんな難解な事件も解決してしまうフランスの名探偵で、ユーモアがあって非常に紳士的な男だ。
 
しかし、探偵は生業ではなく、警視総監の依頼で時折調査を手伝っているだけという。昼間は部屋を暗くして読書と瞑想に勤しみ、夜になると街を徘徊する毎日を繰り返している。素性は分からない事が多いが、何やら複雑らしい。彼には難しい問題に直面すると「フッ」と笑う癖があり、その類稀な分析力によって人の心を全て見透かしているように伺える。
 
人によってはなんて面倒くさそうな奴だと思うだろうが、私はデュパンを、とてもセクシーな男だと感じるし、彼のことが好きだ。むしろ、彼を何故、彼のどこに惹かれているのかすら分からなくなってしまうほどに、なんだかすごく惹かれてしまっている。
 
気になる対象や出来事を調査して、明らかにするのが私の性分で、その結果を皆が同じ「景色」として見れるような言葉で表現できるのが、おそらく私の良さだろうと自分で把握しているにもかかわらず、どうもうまく説明することが出来ない。
 
その大きな原因は、彼の好きな理由を言葉にして並べるのが野暮ったく思えてしまうところにある。結局どんな側面も好きであるだろうと確信を持てているから、何故惹かれているかを自分自身に説明して、納得させる必要がなくなっている。
 
つまり、理由や言い訳などなく、ただ確実な思いだけがある状態。太宰治の言葉を借りれば「あなたに助けられたから好きというわけでも無いし、 あなたが風流人だから好きというのでも無い。 ただ、ふっと好きなんだ」という感じでもある。
 
 
ただの小説のキャラクター相手に何を言っているんだと、少々勢いでお喋りをしすぎてしまった。だが、同様に現実世界でも本当に好きな人への思いについては、きっと上手く話すことが出来ないのだろうと想像がつく。
 
とはいえ、そんなに大切な人物への思いを言葉に表せない、言葉に書き残さない自分を許すことなど、たぶんできない。だから、私は時が来たら、その男について、読むたびに惚れてしまうような物語を書きたいと思う。
 
その人のことを、その人との思い出を、ひとつの物語にすれば、たとえその人が亡くなった時にも、作品の中に生かしておける。いつでも恋に落ちることができるし、愛することもできる。
 
それに、もしその人との間に、子供や孫がいたならば、そんな稀有な男の存在を、私が死んだ後にも、私の書き残した言葉によって、永遠に誰かに伝え続けることだってできる。
 
この感情は、水道橋博士さんが好きな人物については、狂ったように調べては書きまくり、年表にしてしまう性癖があると言っていたけれど、その情熱に近しいような気がしている。
 
このブログはいつもスマートフォンから投稿しているが、その物語は、いつ、どんな端末で描くことになるのだろう。