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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

「詩人は単純な事を伝えるのに、いつも色んな言葉を使う」

昨晩1人で街を歩いている時、柔らかく白く光る月を見て、春の訪れを感じた。「朧月と言うんだったな」とつい口に出して呟いてしまった。

 

霞や靄の先に光る朧月や、深海から水面を見上げた時の、遠い先にある明かりは、「希望」をそのまま表現したような情景に見える。今日の明け方にも、レースのカーテン越しに暗い室内へ差し込む朝日に、希望を感じていた。

こんなふうに、日々の出来事の一つ一つに感傷的になってしまうのは、ある言葉の代わりになる表現や描写を、いつも探しているからかもしれない。「好き」だとか「ありがとう」だとか、そういった思いを違う形で間接的に伝えるのが好きなのだ。

 

いや、江戸っ子だから、ただ恥ずかしいことを言えないだけかもしれない。江戸っ子は格好付けなのである。月島を舞台にする小説、浅田次郎の「月島慕情」に登場するヤクザ・時次郎が、彼女のミノによる愛のささやきに対し、いつも「ばっかやろう」と返すのと同じようなものである。時次郎は江戸のヤクザの男であるから、女に優しい言葉をかけない信条みたいなものがあるのか、それともただ恥ずかしくて言えないだけなのか、いずれにしろどうしても、愛してるの代わりに「ばっかやろう」と口にしてしまうのだ。同様にして私も間接的な表現を…いや、これはちょっと違うかな。笑

 

朧月を見つけたのは、シンガーをやっている女友達のジャズライブの帰り道だった。彼女の歌った[Diana Krall - Fly Me To The Moon (Quartet Performances, Las Vegas) - YouTube]は、そんな(?)私の気分に合っていた。この曲は、好きな男に歌を書く女の気持ちを綴っており、「私を月に連れてって?春の木星はどんなものか知りたいの」などと回りくどく詩的に愛を表現してみたものの、結局最後に「まあ、なんて言うか(in other words...)あなたの事が好きなのよ」と漏らしてしまう愛らしい歌詞と、切なく情熱的なメロディ、跳ねる恋心のようなリズムが魅力である。

私はこの曲について、「in other words...」の後の躊躇いの時間が歌の世界観を作っているとの持論を持っていたのだが、この頃その感覚が、まさに直接的な表現を苦手とする私の人格を表している気がしていて、この歌について説明するのが少しだけ恥ずかしい。好きな歌なんだけどね。