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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

傘をさすと、突然一人ぼっちになる

梅雨入りが伝えられ、雨の日が続いている。雨の音は、孤独を感じさせる。特に、開いた傘へ連続的に叩きつけられる雨音には、寂しさを感じてしまう。雨が特別嫌いなわけではないし、おセンチな気分というわけでもない。でも一体それは何故だろうと疑問に思っていた。
 
 
仕事が終わり、会社を出る。雨が降っているから傘をさすーー。頭のすぐ上で鳴り続ける雨音は、地面に落ちるそれとは違い、少しこもった音がする。たぶんこの音は、私以外の人には聞こえていないのだろうし、傘をさしている人それぞれが、違う音を聞いているのだろう。
なるほどこれが、傘を開いた自分だけに聞こえる音であるせいで、一人ぼっちな気持ちになるのかもしれない。だからもし、誰かと一緒に同じ傘の中にいたとしたら、孤独は感じないということになる。
 
 
ところで、雨が降ると伊坂幸太郎の「死神の精度」を思い出す。主人公は人間の姿をした死神で、物語の内容は、死神が殺すリストの人物の調査をこの世で行い、殺すか生き延びさせるかを見定めるというもの。死神が調査をする日は、必ず雨が降る。
 
死神にリストアップされた人物は、見た目に強いコンプレックスを持つ内気なOLや、他の組から命を狙われるヤクザの親分といった、ひと癖ある人生を過ごしている者ばかり。死神の調査を通して、いわゆる普通の幸せからは離れた世界にいるであろう彼らにとっての、人生における喜びや悲しみとは何なのかを、読者は知ることになる。
 
たいてい、人生における喜びや悲しみには、人生への希望が裏打ちされている。幸せに生きたい、という願いがある。例えば物語に登場するヤクザの親分は、命を狙われるほど窮地に追い詰められた哀れな自分に対し、それでも慕ってくれる子分がいるということに喜びを感じ、それを生きる原動力にしている。
 
死神にリストアップされた彼らの希望や願いは、失礼なほどに雨が似合う。波乱万丈な人生に喜びや悲しみを感じ、それでも幸福な生を願う様子と、雨で霞み濁る世界との相性が抜群にいい。もしかすると、孤独な男や女の心の声は、雨音に似ているのかもしれない。
 
 
梅雨が明けたら、孤独も感じなくなるのかというと、そういうわけでもないのだろう。それより今夜の雨は強過ぎて、傘をさしても孤独だのなんだの言ってる場合じゃないな。