話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

朝のメモ

ハッと目が覚めると、私はまた泣いていた。夢の中で涙を流した記憶は片隅にあるのだが、詳しい理由は覚えていない。ただただ、深い哀しみだけが体の中に残っている。酷い目覚めだが、この頃同じことが何日も続いているので、もう慣れっこだ。

今は5時くらいだろう。東向きの部屋なので、早朝は陽が差し込んで大変眩しくなる。迷惑なほど明るくなる室内は、私が哀しみに浸るのを許さない。

仕方なく、起き上がらずに目だけ動かし、辺りを観察する。電気をつけたまま、着替えもせずに寝てしまっていたらしい。通勤カバンの中身が床に散らばっている。こういう時に、ふと、家族が居たらいいのになと思う。

私の代わりに部屋の電気を消したり、布団をかけたりしてくれるのを期待しているわけではない。哀しい夢の話を聞いて欲しいわけでもない。「ただそこにいるだけでいい」。

使い古されたインチキ臭い台詞だが、このなんとも言えない悲壮感を慰めてくれるのは、他者の存在、ただそれだけであると思ったのだ。とにかく惨めな気持ちの時にも、誰かが待っていてくれたら、それでも生きていていいのだと、許されたような思いになるのではないだろうか。


今日も仕事なので、仕方なく家を出る。そのついでにゴミを出しに行く。大家さんが踊り場の掃除をしている。挨拶をする。下の階に住むお兄さん、向かいの長屋に住むお婆さんとゴミ捨て場で一緒になる。挨拶をする。この街はわりと、いい街かもしれない。