話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

休日の昼酒は蕎麦屋に限る

休日とあらば、目覚めてすぐに飲みたくなるのがビールである。昼過ぎまで寝た後の起き抜けの一杯も最高だが、「いや、昨夜も結構飲んだしな」と少しためらって、一先ずシャワーを浴びてから、「いや、やっぱり」と冷蔵庫から缶ビール取り出しプシュっとやるのも、また良い。


とはいえ、こんな甘美な生活はなかなか許されない。できるのは、独り身で暇のある人間くらいだろう。他の誰かの視線を背に、朝から飲むのは後ろめたさを感じるし、平日残した仕事を夜までに片付けるつもりだったりすると、ついうっかり飲み過ぎるわけにもいかない。

誰かと外へ昼ご飯に行くとしても、相手が飲兵衛でない限り、真っ昼間から威勢良く「ビールひとつ!」なんてなかなか言い出しずらかったりする。それでもなおビールが飲みたい。そんな時には、蕎麦屋へ行くことにしている。


蕎麦屋を選ぶ理由は幾つかあって、まず、料理がお酒に合うのは大前提である。そのうえで、瓶ビールを頼めることと、食後に温かい蕎麦湯を出してくれるのが重要なポイントになっている。

うまい蕎麦屋というのは、蕎麦を注文してから出てくるまでに大抵時間が掛かる。既に茹でてある麺を使わず、注文のたびに生地を切って茹でているためだ。しかし、茹で上がりを待つ時間というのは結構長い。そわそわしてしまう。


そこで瓶ビールと一品料理だ。待っている間の繋ぎになるし、腹を慣らすこともできる。焼き海苔や板わさ、青菜のお浸しなどは、確実にすぐ提供されるのでおすすめである。

生ビールでなく瓶ビールを頼む理由は、食事の相手を昼酒の道ずれにするため。相手にそれ程飲む気が無かったとしても、ビール瓶と自分の分のグラスを目の前にすれば、大概は「少しくらい飲もうかな」と思わずにはいられないだろう。ひとり酒をする、させるの申し訳なさを互いに感じずに済むのにもつながる。

それに、誰かと食事を共にする際ひとつの酒があるのなら、分けて飲んだ方が楽しいし、仲良くなれる気がしている。だから私はとりあえず瓶ビールを頼むのである。


そうしてビールが空いた絶妙なタイミングで、ついに蕎麦が運ばれて来る。蕎麦猪口につゆを注いで、ツヤツヤとした麺を少し浸してズルッとひと口。今度は箸先にわさびをつけてもうひと口。旨くないわけがない。

一品料理が美味しくて、仕上がるまで時間が掛かる蕎麦屋の「せいろ」は、大概旨い。蕎麦を待つ間のビールで気分も高揚していることもあり、より美味しく感じるのである。


蕎麦を食べ終わったころに運ばれて来るのが蕎麦湯である。これは蕎麦の余韻に浸れるうえ、酔い覚ましにも良いので、昼酒における大事なポイントとして捉えている。

ビールで少しポーッとした気持ちになってしまっていても、蕎麦つゆを蕎麦湯でのばしたものを飲むと胃が温まり頭もシャッキリとしてくる。食事が済んだ後に仕事や予定のある(昼酒飲みの)人間にとって、蕎麦湯は嬉しいサービスなのである。

ただ、お腹がいっぱいになり過ぎると眠くなってしまうので、こういう時に出される蕎麦湯はドロドロではなくサラサラとした、胃が膨れないタイプだと有り難い。


ここまで色々と話してみたものの、休日の昼酒に蕎麦屋を選ぶ理由は、なんとなく気分がいいからと言うのが一番大きいかもしれない。だって、蕎麦屋で誰かと瓶ビールを飲む休みの昼って、なんだか幸せな感じがするでしょう?