話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

八重洲・おかめの「茶飯おでん」

料理が旨くて雰囲気もある飲食店の話は、多くの人が欲しがる情報だ。一方で、特別美味しくもないし、話題になるような看板メニューもない普通の店の話に、興味のある人は殆どいないだろう。

けれども私は、そういう店の話をしたり聞いたりするのが結構好きだ。なぜなら、まだ描かれていない小説が、そこにはあるような気がするからだ。どんな内容でも、お店のことを話すと、訪れた時の記憶が蘇り、そこに宿る物語を再現できる。

 

今回のはてなブログのお題は、「思い出のレストラン」。どんな店のどんなエピソードを書こうか悩んだのだが、これまであまりシェアする必要のなかった、おそらくまだ誰にも話したことのない話をしようと思う。

テレビでも話題になったアレが旨かっただとか、店にはこんなに伝統があるだとか、ここが凄いだとかそういう話はやめにする。分かりやすい価値の指標は設けない。大切な思い出に、他の誰かの評価を求めるのはナンセンスだろう。

さて、そろそろ私の思い出のレストランのことを話し始めよう。東京・八重洲にあった甘味処「おかめ」にまつわる話である。

 

幼少の頃、休日は家族で東京駅の地下街や日本橋三越の辺りを周ることが多かった。父の運転する車で、母と姉と一緒に行った。到着すると、大抵2人1組に分かれてお店を巡るのだが、ママっ子だった私はいつも母と一緒だった。

お昼ご飯は家族揃っての時と、チームで別々の時とある。家族が揃うと、父の趣味で百貨店のちゃんとしたレストランに入ることが多かった。高級で品があるのは分かるのだが、私にとっては何度食べても慣れない味で、口に合わなかった。恐らく、味覚の似ている母は同じことを思っていたはずだ。あまり箸が進んでいなかった記憶がある。

 

そんな彼女と2人だけでお昼を取るときは、いつも八重洲にある「おかめ」という甘味屋に入った。店は、東京駅と日本橋の丁度間くらいに位置しており、必ず「茶飯おでん」を2つ頼んだ。茶飯おでんとは、茶碗に盛った出汁で炊いた味付きのご飯と、丼におでんを6種くらい、それに漬け物を添えたセットのことである。

味は、普通に旨い。おでんには凄く味が染みていて、薄味の茶飯がとても進む。たまにかじる沢庵による、食感と味の変化が嬉しかった覚えがある。

茶飯とおでんだなんて、どこでも食べられるようなメニューだが、母としては手抜き料理の印象があるようで食卓に出しづらく、家ではなかなか食べられない物だった。でも、母と私はこういうのが大好き。だから、我々にとってこの茶飯おでんは最高のご馳走だった。

ちなみに、デザートにクリームあんみつだとかおはぎだとかは頼まない。母は甘いものが嫌いだからと言う理由で、私は母の真似をして注文しなかった。今でも私がスイーツを進んで食べないのは、彼女の影響が強いのかもしれない。

 

先日、母方の祖父が亡くなり、母の両親がどちらも他界してしまった。以来、大人になるにつれて疎遠になっていた母との付き合いが増した気がする。幼少の頃の思い出を語り合うことも多い。この店の茶飯おでんも話題にあがった。

 八重洲の「おかめ」は既に閉店してしまっているが、最近、有楽町で営業しているのを知った。まだ寒いうちに、母を誘って行ってみようと思う。

 

甘味おかめ 交通会館店

食べログ甘味おかめ 交通会館店

ぐるなびお題「思い出のレストラン」

http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/gnavi201503