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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

ギャンブル、馬券、酒、鰻。今年出会えて良かった本

出かける際、いつも鞄には必ず2、3冊本を入れている。本屋やamazonでは、月10〜20冊、多い月は30冊程度買っている。お陰で鞄の中のみならず、台所の棚、テーブルの下、ベッドの脇など家の中のありとあらゆる所に本が転がっているという話は置いといて、たまには読んだ本の話をしたいと思う。

 

神はダイスを遊ばない (新潮文庫)

神はダイスを遊ばない (新潮文庫)

 

 

まずは、作家でギャンブラーである森巣博の「神はダイスを遊ばない」。海外でギャンブル生活を送る主人公のヒロシが、狂ったようにギャンブルにのめり込んでいく様子を描いた話で、ノンフィクションとフィクションの間を取ったような作品。

 
ゲームの前ではヒロシがいつも真剣勝負なのが良い。私もゲームをやるので共感を持った。まあ主人公は莫大なお金を賭けているのだからそりゃそうなるのだろうが。
 
展開はとにかくドラマチック。欲望を飼いならしながらとことん自らを調教してテクニックを突き詰めたり、ゲームに負け越し、いつやめるべきか?と冷や汗をかき悩みながらゲームを続けた後に大きな勝利を獲得したりする。
途中からディーラーの白人女性と付き合って、ホテルのスイートで一緒に生活するのだが、これも物語のいいスパイスになっている。
 
文章はかなりポエティックでまどろっこしい。ヒロシは孤独にギャンブルをやる自分の人生にエクスタシーを覚えている様子で、とても真面目で滑稽、理知的で愚かに見える。
おそらく大抵の人は、不真面目なことについて真剣になるなんてなかなか出来ないはずだし、どうしても誰かの目を気にしてしまう。ヒロシはその自らのアンビバレンスさえも受け入れて、信ずる道を突き進んでおり、読んでいて心地が良い。

 

馬券偽造師 (幻冬舎アウトロー文庫)

馬券偽造師 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

 

こちらは中山兼治の「馬券偽造師」。タイトルのままだが、競馬の捨て馬券を万馬券に偽造し儲け続けた男のノンフィクションの物語。実際に起きた事件の詳細を犯人自らが書いている。

 
主人公が偽造に挑む様子は、職人技とも表現できるほど凄まじい。馬券の偽造を防ぐため、構造や管理システムを複雑化していく日本中央競馬会に、もともとデザイナーであった主人公がその技量を持ってして挑み続ける。
 
優秀な技術者は時としてハッカーの顔を持っていることがある。主人公も同様で、馬券をひと目見ると、「これをああすれば多分コピーを作れる」と気付いてしまうのだ。そして、ハックしたいという欲望に勝てずに馬券を家に持ち帰り、細かく構造を調べ、偽造してしまう。彼も歴史に名を残すハッカーのうちの1人ではなかろうか?

 

 

 

 

 

呑めば、都―居酒屋の東京

呑めば、都―居酒屋の東京

 

 

 

 

大洋に一粒の卵を求めて: 東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む (新潮文庫)

大洋に一粒の卵を求めて: 東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む (新潮文庫)

長くなったので、ここからは3作を簡単に紹介する。1つ目は、ソムリエ田崎真也による「ワインと料理 お楽しみ自由自在」。様々なお酒やワインに合う料理についての解説本で、とにかく親切で詳しいのが良い。この本を参考に時々料理をするのだが、大変コストがかかるのが難点である。
 
2つ目は、早稲田大学で日本文化を研究するマイクモラスキー教授による、飲兵衛の超大作「呑めば、都」。米国人から見た日本とは何か、日本の酒場には何があるのかをこと細かく記してある。
モラスキーさんは長く日本で日本文化を研究をしている。研究者だからというよりも、自身が米国人であるが故に、強い客観性を持って日本の話ができるのかもしれないし、日本にのめり込んでいるのかもしれないと感じる。
 
そして鰻を愛でる者としては外せない、世界のウナギ博士塚本教授による「大洋に一粒の卵を求めて」。これについては過去の私のブログを読んで貰えば感想も想像がつくだろう。
 
おそらく、いや、やはり私は、とことん何かを突き詰めるという行為や、それで得られる知や感情、それをする人達が好きなのだ。
 
誰かにとってどうでも良いことは、誰かにとって非常に大切なことである。今年も良い本を読んだ。