話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

街角のフリーペーパーは、ポップアップウィンドウに似ている

就職活動で「学生時代はフリーペーパーを作っていました」なんて言うと、「あー、うん、なるほどね」となんとも言えない反応をしたりされたりするようですが、あれは何なのでしょうね。

フリーペーパーが悪いわけでも、学生の作るフリーペーパーが酷いわけでもないし、フリーペーパーを作っていたことは全く憎まれるようなことではないと思うのですが。

もし「学生がフリーペーパーを作る」行動や現象にマイナスの印象を持たれているからだとすれば、昔から多くの学生が総じてやって来た活動であるためというのが理由でしょうか。 けれども、貴方や私達だって、近くの大人や、前任者の事例をこれまで何度も踏襲してきたではないですか、などと考えてしまうのですが。

しかしながら、そんな自分たちを正面から認められないようにして、過去の真似事をしているように見えなくもない学生にいい印象を持てない気持ちも、分からなくもありません。

ところで、私は街で良いフリーペーパーに出会うと、下足箱にラブレターが入っていたのに気づいた時のような、なんだか嬉しくて恥ずかしい思いになります。

それは、ネットにあるサイトの、特定のページの中にしか設置されていないポップアップウィンドウを開いた時のようでもあります。そのページへ遷移したユーザーだけのためにあるコンテンツって、なんだかロマンチックだと思いませんか?

ネットでサイトを見ている時に、そういうウィンドウが立ち上がると、こんな私のようなユーザーのために、こんな所まで丁寧に気を使っていただいて…と嬉しさと申し訳なさとでなんともいえない恍惚とした、そして照れくさいような気持ちに私はなるのですが、街角でいいフリーペーパーを見つけた時も、同じような気持ちになってしまうんですね。

大抵の本や雑誌は、本屋や図書館へ行けば、あるいはamazonを開けばそこに大体置いてありますが、フリーペーパーはそうはいきません。 あるべき場所にしか、置いてないのです。例えば、東京都港区の広報誌「広報みなと」は港区の配布するフリーペーパーですが、港区のいかにも公的な場所にしか置かれていませんし、世田谷区や他の都道府県ではなかなか入手できません。

ひとつそんなフリーペーパーで私の好きなものを紹介しますと、東京都交通局のPR誌「ふれあいの窓」です。都営地下鉄の改札脇などで手に入れることができる月刊のフリーペーパーで、毎月東京都の色んな街やエリアを特集/紹介しています。

その場所ならではのイベントや施設、グルメ情報を綺麗な写真とともに掲載しており、それらはもちろんとても良いコンテンツなのですが、私の1番のお気に入りは別にありまして、それは、お笑い芸人・中川家礼二さんへのインタビュー「都営交通 出発進行」です。

この企画は、このインタビューページの前にある「都営交通の現場」という、都営交通にまつわる豆知識だとか取材をするコンテンツと対になっています。毎号、その都営交通の現場の企画に関する話題を礼二さんに振って、お笑いの芸になぞらえて返してもらうという、ちょっと捻った企画です。

つまりどういうことかというと、今号の都営交通の現場は「都営バス運転手の新人研修」がテーマだったのですが、それを受けて礼二さんには「芸人さんの世界での研修や訓練はというとどのような形になりますか?」「運転の仕事の場合、事故になりそうになったヒヤリハット情報を参考にしますが、仕事でヒヤリとするのはいつですか?」といった具合でインタビュアーが質問します。

このインタビュー、礼二さんが本当にいい返しをするんですね。普段ネタで運転士のモノマネをしているから、誌面でもふざけるのかと思いきや、本当に真面目に芸の道について真っ直ぐに回答するんです。

たとえば最初の、芸人における研修や訓練についての質問なら「舞台で場数を踏むのが1番ですけど、訓練としては、僕は今でも人の芸を見ますね」なんて答えるんですよ。全く笑かそうとしないんです。 こんなに真摯なのは、たぶん、モノマネはしているけれども、彼の根底には鉄道の仕事に就く方への尊敬があるからなんだと思います。そこが本当にいい。

もしかすると、まだ東京の街と東京都交通局とお笑いが好きな私くらいしか見つけられていない街角のポップアップウィンドウかもしれないのですが、皆さんぜひ見てみてください。サイトからも閲覧できるようですが、ぜひ冊子を手にとってみてほしいです。

フリーペーパーに限らずとも、担当者や編集者による、読者や媒体への想いや尊敬が感じ取れる企画って本当にいいですよね。私もそういうページや場所をいつも作っていたいと思います。大事にすべき人を大切にできるような、そういったものを。

そういえば、明日もお気に入りの雑誌の発売日でした。明日が来るのが、楽しみです。