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話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

落語初心者による、「渋谷らくご」体験記

落語って面白いのだろうか。好きな人はよく通っているけれど、初心者の私には古い言葉も文脈も理解できず、きっと楽しめないに違いない。けれどいつかは行ってみたい。そんな気持ちをずっと抱えながら生きてきた。

しかし先日、思い切って落語へ行ってみようと思った。誕生日だったからだ。毎年誕生日には、「興味はあっても踏み込めなかったこと」を体験する機会を自分にプレゼントしているのだが、今年はそれが落語だった。

実は友人に誘われて、2、3度寄席に赴いたことがあるのだが、その後自ら演芸場を訪問していなかったのも、今回のきっかけになっている。せっかく貰った機会を無駄にしていたなと悔やんでいたのだ。

それに、「初心者でも楽しめる」がキャッチコピーの落語のイベントが馴染みのある渋谷のライブ会場で開催されていた。 「渋谷らくご」という渋谷の劇場・ユーロライブで開催された定期落語会で、お笑い芸人のサンキュータツオさんが、毎回出演する噺家さんをキュレーションしている。 タツオさんが「落語初めての方も」とよくツイートされているのも背中を後押しした。

そんなわけで、9月9日〜13日の間開催された渋谷らくごに行ってきた。実際に観覧してみると、非常に面白かった!お笑いのライブを見るような感覚でリラックスして楽しめた。江戸の職人の人情溢れるエピソードが多く、特に「子別れ」という噺には涙してしまうほどだった。

私の大好きな鰻を食べるシーンもあり、食べられていた鰻の形態についての考察、他に鰻が出てくる落語をついつい調べたりもしてしまった。

*「後人鰻」は、「後生鰻」の間違い

古語ばかりで分からないかと思いきや、全くそんなことはなく、殆ど現代語で、きちんと聞き取れるし理解できた。難しい専門用語や落語ファンならおなじみのエピソードが出てくると、噺家さんが話の流れの中でスムーズにジェスチャーをつけて説明してくれて、置いてけぼりになることもない。そうして自然に落語に詳しくなっていけるのも良い。

落語の噺を始める前の「まくら」では、落語家の普段の姿、最近行った営業先でのエピソードなど、どんな人にも身近に感じられ心をほぐしてくれるような話をしてくれる。

「渋谷らくごに出るからにはーー」といった、"ならでは"のエピソードを展開してくれる噺家さんも多く、其々がどんなまくらを話すのか楽しみで仕方がなくなった。なお、まくらはpodcastで聴くこともできる。

毎回発行されている「どがちゃか」という「公式読み物」(パンフレット)には、出演する噺家さんの紹介や前回のアーカイブも記載されていて読み応えがあって面白い。これに載る自分の紹介を楽しみにしているという噺家さんもいた。

古典芸能を観に行くと、よくおじいさんやおばあさんの中に1人若者が紛れてしまい、肩身の狭い思いになったりもするが、若いお客さんが比較的多いのにも安心できた。

また、演芸場ではどこでどんなふうに料金を払ったら良いか分からず、休憩のタイミングも掴みづらかったりもするが、「渋谷らくご」は予め決められた時間帯の講演から好きな回を選び、カウンターでチケットを購入するシンプルな導線なのも良い。

しかも、4人の噺家が出る「しぶやらくご」は大人の当日券で2500円、2人の噺家が出る「ふたりらくご」は1200円と凄く安い。ふらっと映画を見に行く感覚でむかえてしまう。当初の私のように、敷居の高さに怯えて行こうか行くまいか悩んでいる人は、是非気軽な気持ちで行ってみて欲しい。

こんなにカジュアルに落語を楽しめるのなら、時間さえ合えばきっと来月も行くんだろうなと思っていたら、本当に来てしまっていた。落語にハマり始めている自分を見つけた。

*渋谷らくごの10月公演は18日まで開催されている。