話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

伊坂幸太郎とチョコミント

バーに行くと必ず頼むのが「グラスホッパー」。ペパーミントとカカオのリキュール、生クリームをシェイクして作るショートカクテル。味は”まんま”チョコミント。注文するとたいてい珍しがられるので、飲む人はほぼいないのだろう。甘いものが苦手な人にはおすすめできない。

私がグラスホッパーを飲むようになったのは、伊坂幸太郎の小説「グラスホッパー」を読んでから。ただのくだらない韻踏みだ。小説について少し説明すると、主人公は最愛の妻をひき逃げによって失い、その犯人を復習目的で探していたところ、殺し屋同士の闘争に巻き込まれるというストーリー。主人公は命の不安を感じながらも、真実に近付こうともがき続ける。ジャンルで言えば、ミステリーのハードボイルド。

主人公は物語の序盤、犯人を追っている時に、大学時代に教授から言われたバッタについての言葉を思い出す。たくさんの人が密集する、渋谷のスクランブル交差点で。「これだけ個体と個体が接近して、生活する動物は珍しいね。人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いんだよ」「蟻とか、バッタとかに近いんだ」。

また、物語に登場する殺し屋が、大事な殺人の前に相手へ告げる台詞でも、バッタについての話をする。「バッタは、密集したところで育つと『群集相』と呼ばれるタイプになる。そいつらは、黒くて、翅も長いんだ。おまけに、凶暴だ。どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。人もごちゃごちゃしたところで、暮らしていたら、おかしくなる。人間は密集して暮らしている」。

私は普段の生活で何か問題が合った時なんかに、この小説のバッタについての語りを思い出す。凶暴化した私。暴力的になる貴方。今の我々は、普通のバッタか、それとも――。

バッタは英語でグラスホッパーグラスホッパーは、バーで1人、自分を見つめ直すのに最適なカクテル。

今週のお題「チョコミント