話半分で聞いてください

口ベタによる一生懸命

独り立ちの時、お母さんがくれた鍋

鍋の手入れをする時間が好きだ。

黒ずみを落とすため、鍋の外側と内側をスポンジで丁寧にこするのは根気がいる。けれども、だんだん綺麗になっていくと嬉しくて、ツヤツヤに戻った姿を見ると幸せな気持ちになる。

うちのお鍋は、私が一人暮らしを始める時にお母さんが持たせてくれたもの。特別な素材やブランド品ではなく、一般的なアルミ製の雪平鍋と両手鍋。サラリーマンなら中堅かもしれないが、両方とも9年目のベテラン選手だ。

新品の時についていたはずの表面のコーティングはすっかり剥がれているし、アルミ鍋は焦げ付きやすい。手入れも正直ちょっと面倒だし、新品の良いお鍋に買い替えることも考えた。けれども、ずっとそれが出来ずにいる。

なかなか捨てられないのは、家族と私を繋ぐ特別な存在だからだろう。実家との距離は遠くとも、母から貰った鍋がうちで毎日の生活を助けてくれていると、一緒に暮らしているような気分になる。

時間があった日の夜、洗った鍋で米のとぎ汁を煮立てて流し、丁寧に手入れした。アルミ鍋を長く大切に使うためのポイントだ。ツヤツヤの鍋をふきんで拭いて戸棚に戻す時間が、たまらなく愛おしかった。

#わたしの自立

バナー
Sponsored by CHINTAI